AI面接って、経歴と受け答えのどこを結びつけて合否を分けてるの?

AI面接って、経歴と受け答えのどこを結びつけて合否を分けてるの?
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経歴と受け答え、別々のものを見ているはずなのに

録画面接やAIによる書類選考。実際に受けた人もいれば、まだニュースや企業の採用案内で見ただけという人もいると思います。応募書類には経験年数や資格や職種が並んでいて、面接では受け答えの説明力や落ち着き、話の組み立てが見られる。この二つは、明らかに別のものを測っています。

AIによっては、それらをまとめて処理して候補者を似た型ごとに整理することもあるようです。使われ方は一様ではありませんが、少なくとも経歴という一つの束と、受け答えという別の束を突き合わせる場面は出てきます。この二つを、どこでどう結びつけているんでしょう。

「総合的に見ている」で片づけたくなるけれど

AIがいろんな項目を総合的に見て判断している、と言われれば、まあそうだろうと思えます。そこは引っかかりません。

でも、ここで一つ不思議があります。経歴と受け答えは、そもそも同じ尺度に乗っていません。「資格の数」と「話の分かりやすさ」を、そのまま並べて比べることはできない。片方は履歴書の欄に、もう片方は面接の受け答えにあって、直接つながる線がない。この二つを結びつけるには、それぞれをどう数値にして、どの項目にどれだけ重みをかけるかという設計が要ります。ここは「総合的に見ている」だけでは説明がつきません。

一つずつ比べても弱いのに、束ねると強くなる

そこで、経歴側と受け答え側という二つの別々の束を、まとめて連動させる見方が使えるか、やってみましょう。統計にある正準相関分析という考え方です。名前は難しそうですが、やっていることは「二つのグループの、いちばんよく連動する組み合わせを探す」だけです。

面白いのはここからで、経歴の項目を一つ、受け答えの項目を一つ取り出して相関を見ても、たいてい弱い関係しか出ません。「資格の数」と「説明力」を直接ぶつけても、そんなに強くはつながらない。ところが、経歴側の複数項目を重みをつけて足し合わせた合成得点と、受け答え側の複数項目を重みをつけて足し合わせた合成得点、この二つの合成得点同士なら、ぐっと強く連動する組み合わせが見つかることがあります。

個別の項目をどう見比べても現れなかった関係が、束ね方を工夫した「経歴の型」と「受け答えの型」の間には現れる。一つずつの表を眺めていては気づけない対応が、合成の仕方を最適化すると浮かび上がってくる。これがこの見方の非自明なところです。

同じ突き合わせは、おすすめにも健康診断にも

同じ見方は、身近なところにいくつも顔を出します。

健康診断を思い浮かべてください。血液検査の数値がずらりと並ぶ束と、食事や運動や睡眠といった生活習慣の束。一つの検査値と一つの習慣を直接ぶつけても弱い関係しか出ませんが、検査値をまとめた合成得点と生活習慣をまとめた合成得点なら、強く連動する軸が取り出せることがあります。「この検査の型は、この生活の型と結びつく」という具合です。

おすすめの仕組みとも似ています。以前、YouTubeのおすすめが「見たかったやつ」を先回りしてくる話を書きました。あれは一つの視聴の表を分解して隠れた好みの軸を取り出す話でしたが、今回のは違って、経歴と受け答えという二つの別々の表を用意して、両方に共通して現れる連動の軸を探しています。一つの表を分けるのか、二つの表を揃えるのか。似ているようで、向きが少し違います。

式に書くと、何を最大にしているのかが見える

では、二つの束を結びつけるとはどういうことなのか、式に書き直して見てみましょう。

経歴側の項目を並べ、各項目について平均からのずれを取ったものを $x$、受け答え側も同じように並べたものを $y$ とします。$x$ は「経験年数、資格の数、職種……」を縦に並べた一人分のデータ、$y$ は「説明力、落ち着き、話の組み立て……」を並べた一人分のデータ、と思ってください。平均からのずれを使うのは、人によってどちらの方向に動いたかを比べるためです。

それぞれに重みをつけて足し合わせた合成得点を、次のように作ります。

$$u = a^{\top} x, \qquad v = b^{\top} y$$

$a$ は経歴側の各項目にかける重み、$b$ は受け答え側の各項目にかける重みです。$u$ が「経歴の合成得点」、$v$ が「受け答えの合成得点」。重みを大きくした項目ほど、その合成得点に強く効く、というだけの話です。

正準相関分析がやっているのは、この二つの合成得点 $u$ と $v$ がいちばん強く連動するように、重み $a$ と $b$ を選ぶことです。連動の強さは相関係数ではかれるので、

$$\max_{a,\,b} \ \operatorname{corr}(u,\, v) = \max_{a,\,b} \ \frac{a^{\top} \Sigma_{xy}\, b}{\sqrt{a^{\top} \Sigma_{xx}\, a}\ \sqrt{b^{\top} \Sigma_{yy}\, b}}$$

と書けます。記号が増えましたが、読み方はそのままです。分子の $\Sigma_{xy}$ は、経歴側の項目と受け答え側の項目が、どの組み合わせで一緒に変わりやすいかを並べたもので、統計では「二つのグループ間の共分散行列」と呼びます。分母の $\Sigma_{xx}$ と $\Sigma_{yy}$ は、それぞれの束の中で各項目がどれだけばらつくかに加えて、束の内側で項目同士がどう一緒に動くかまで含めたものです。全体で「二つの束それぞれの動きに対して、束をまたいでどれだけ足並みがそろっているか」の割合を測っていて、それが最大になる重みの組を探しています。

こうして選ばれた $a$ と $b$ で作った $u$ と $v$ は、このデータの中ではほかの重みの組より強く連動します。ただし、同じデータで相関が最大になる組を探している以上、偶然の並びまで拾って相関が高くなることがあります。見つけた関係が別の候補者データでも再現するかを確かめて、はじめて安定した関係だと判断できます。下の図は、そうして取り出した経歴側の合成得点と受け答え側の合成得点を、一人一点で散らした概念図です。個別項目の組では見えにくかった対応が、二つの合成得点の関係として見えてくる様子を表しています。

経歴側の合成得点(横)と受け答え側の合成得点(縦)の概念図。個別項目では見えにくい対応が、二つの合成得点の関係として現れる
経歴側の合成得点(横)と受け答え側の合成得点(縦)の概念図。個別項目では見えにくい対応が、二つの合成得点の関係として現れる

この見方で分かるのは、合否ではなく評価の構造

ひとつ添えておくと、AIの選考が実際にこの計算そのものをしているとは限りません。ここでやったのは、経歴と受け答えという異なる二種類の情報が結びついて見える現象を、正準相関分析という見方で解釈できるか試したものです。この見方が教えてくれるのは、二つの束の間にどんな連動の構造があるかまでで、合否をどう決めているかという判断のロジックや、どちらがどちらの原因かという因果までは分かりません。すでにある評価が「どんな型とどんな型を対応させているのか」を後から眺める見方だと思ってください。

そう考えると、少し気になることが出てきます。経歴側の合成得点と受け答え側の合成得点の連動から、既存の評価データの中で「この経歴の束が、受け答えのこの束と連れ立って動いていた」という対応の輪郭が見えてきます。ただし、どの項目が効いていたかを重み $a$、$b$ の大きさだけで読み解くのは慎重にしたほうがよくて、似た項目が混ざっていると重みは簡単に揺れます。それでも、AI内部の判断根拠そのものではないにせよ、選考のデータが何と何を結びつけていたのかを一本の軸として眺められるとしたら、その評価の仕組みを自分の側からも問い直せそうな気がしてきませんか?

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